根津神社
文筆の向上にあやかれるスポットがあるということで「根津神社」へ向かいます。ツツジやサツキで知られるこの神社の境内には、この地域に暮らした森鴎外・夏目漱石が腰掛けて作品の着想を得たり、案を練るに及んだという「文豪の石」があるのです。
実際に目の前にする文豪の石は、明治期・大正期のビッグネームが座ったらしきにしては、かなりシンプルで柵で厳重に囲まれてもいません。しかし、こんなさりげなさが、本当に日常の中に文学の香りが息づいている街であることの証のようにも思えてきます。
一炉庵菓子舗
このエリアを歩くと、文学者とのゆかりを示すプレートや石碑が、街の景観の一部であるかのように、自然に立っています。夏目漱石の旧居跡なども、石碑の題字は小説家・川端康成の蹟(て)によるものというのに、あまりに普通に鎮座していることに驚かされます。
漱石がロンドン留学からの帰国後すぐに腰を落ち着けたのは、この千駄木の地。ここで、彼は処女小説『我輩は猫である』を執筆しました。それにより付けられた通称が、“猫の家”。残念ながら、猫の家は愛知県犬山市の野外博物館「明治村」へ移築・復元され、いまは跡地だけとなっています。
漱石も好んだ和菓子店「一炉庵菓子舗」は、現在も営業中。谷根千にはこうした老舗がいまも意気揚々とのれんを掲げ、街の活力になっています。
漱石も好んだ老舗の和菓子店「一炉庵菓子舗」
一炉庵では、パリッとした皮の食感が楽しい「夜雨最中」や、色とりどりの季節の上生菓子、大きさに少なからずびっくりしてしまう「どらやき」などがおすすめ。漱石はどの和菓子が好きだったのかを考えながら食すのもオツなものです。